2008.12.27

JAGDA新人賞2009:展覧会情報・選考経緯

受賞者 :色部義昭・えぐちりか・岡田善敬・榮 良太
/以上4名(50音順)

作品発表:年鑑『Graphic Design in Japan 2009』(2009年夏発行予定/六耀社刊/予価15,750円)
授賞式 :2009年6月12日(金)東京ミッドタウン・ホール 詳細


展覧会「JAGDA新人賞受賞作家作品展2009」

2009年6月8日(月)〜7月3日(金) 東京・クリエイションギャラリーG8 詳細
2009年7月13日(月)〜7月23日(木) 大阪・平和紙業ペーパーボイス 詳細
2009年8月27日(木)〜9月3日(木) 滋賀・成安造形大学 ギャラリーアートサイト 詳細
2009年9月19日(土)〜9月30日(水) 富山・元麻布ギャラリーTOYAMA 詳細
2009年10月13日(火) 愛知・名古屋芸術大学 アート&デザインセンター 詳細
(台風18号の影響により展覧会は開催中止/イベントのみ開催します)
2009年10月17日(土)〜10月25日(日) 新潟・新潟県立近代美術館ギャラリー 詳細
2009年11月13日(金)〜20日(金) 福岡・西日本工業大学 デザイン学部3Fギャラリー 詳細

新人賞展2009画像


選考経緯

・新人賞対象者203名(2008年10月末日付で39歳以下のJAGDA会員)のうち、「17票以上の得票作品が1作」または「14票以上の得票作品が2作以上」の条件にかなう出品者20組21名をノミネートとした(注:入選ボーダー票数がカテゴリーによって違うため、出品数の最も多いポスターを基準カテゴリーとすること、また、選考委員は自身の出品作品および主体的に制作に関わった作品には投票できないルールのため、選考委員数を満票数に置き換えることの2点について、コンピュータで補正したスコアを使用)。
・ノミネート会員は次の通り。
相澤千晶・池田泰幸・稲葉大明+近藤洋一・色部義昭・えぐちりか・大島慶一郎・大原健一郎・岡田善敬・木住野彰悟・喜多昭夫・榮 良太・白井陽平・峠田充謙・田中義久・永田武史・平野光太郎・古谷 萌・松永真次郎・間宮伊吹・八木義博(以上20組21名/50音順)
・ノミネート会員の全入選作品を会員ごとにまとめ、一般グラフィック選考委員(当日出席した26名)がひとり3票までの投票権を持って、用紙記入方式で投票を行った(出品会員氏名は非表示)。その結果、色部氏が19票、えぐち氏が11票、岡田氏と榮氏が各10票を得票し、他の候補者は6票以下であった。満場一致で、今回は4名を新人賞とすることを決定した。

・年鑑選考会全体の情報はこちら


新人賞総評(記/松下 計 2009年鑑編集長)

新人賞は年々その競り合いを加熱化させているように感じている。こうした激戦を制して新人賞を受賞するのはもちろんたやすいことではなく、同時に「ある傾向」のようなものがあるわけでもない。若いデザイナーそれぞれが自らの信念で鋭く仕事に向き合った成果によって評価されるという感想をあらためて持った。
結果として今回の新人賞は、受賞者それぞれが仕事に対する無二のアプローチを持っていて、バラエティに富んだものとなった。選考委員もまた高潔な志操をもって選考に臨んでおり、それゆえ白熱した議論が交わされるシーンもあったが、各賞に触れ、誠意と厳格さをもって、現在予測されうる最も公平でピュアな所産であったと感じている。また、名門チームに在籍していないとなかなか受賞できないような昨今の雰囲気の中、久々に東京以外の地域からの受賞者が現れたことにも触れておきたい。

色部義昭
新人賞の選考にあたっては、強く訴えかける「濃い味付け」のものに目が留まりやすい傾向もやや否めない中、奇をてらわず、全体にスタティックなアプローチながら、伝える内容をしっかりと掴んで定着させている点は新人らしからぬ仕事ぶりと言える。モノトーンの仕事が多いのも自信の表れであろうか。個性あるポスターワークからスタンダードなサイン計画の仕事に至るまで安定した力を見せている。文字要素の扱いなども確かであり、高水準を保った本格派の登場を感じさせる。


えぐちりか
パワフルであることは我々の職能に必要な才覚のひとつである。目指した表現を、周辺を巻き込みながら力強く射抜いている点において、作者の「作りたい」「表現したい」という意志の強さが際立って作品から漲っており、それらが選考委員の心を掴んだに違いない。今回受賞の対象となった作品群は、ハッピーな世界観にひと摘み毒を盛るような絶妙とも言えるトーン作りに挑戦したものが多かったが、これらの腕力からして目的に合わせて表現するレンジをもっと発揮できそうな気配である。


岡田善敬
自主制作のタイプフェイス「オバケ!ホント?」は、私たちが忘れかけていた「fun to design」とも言うべき純粋に造る喜びをあらためて想起させてくれる仕事であった。作品の存在感自体が時にコンセプトを凌駕する瞬間があるのだと再認識できる作品であったと思う。作品をつぶさに見ると、個々のかたちのつめ方、画面のコンポジションなど構成意識もしっかりとしていて、目指すイメージに的確に追い込む手腕がうかがわれる。これらを実現するには目的を絞る勇気と念入りな構想が必要であったに違いない。


榮 良太
複数の仕事が集まることで作者の力量が更に顕在化し、高く評価されたと思われる。色とかたち、文字の扱い、すべてが軽妙で、ツボを得た小気味良さをもって、どこかひょうひょうとした今どきの空気感を感じさせる。また一貫してそのトーンが乱れないのは安定した表現力と経験値によるものだろう。手垢を感じさせないスマートな表現でありながらこれらの仕事が薄っぺらく見えないのは、表現しているものを作者が充分に咀嚼して自分のものとしているからだと思われる。