2009.03.02

JAGDA賞2009総評

高まるJAGDAの社会性を背景に、「JAGDAカテゴリー賞」を、今回より「JAGDA賞」に格上げすることになった。これは年間で、グラフィックデザイン領域における最も優れた仕事を顕彰しようというものである。JAGDA賞という名称になって初となる本年は、いずれの作品にも総じて「美しく、自信に満ちあふれた技芸の確かさ」という点が認められよう。また、新人賞と兼ねて受賞することの是非をめぐって選考委員の間で議論が交わされたが、協議の結果「兼ねての受賞はあり得る」と結論された。

(記/年鑑『Graphic Design in Japan 2009』編集長 松下計)

ポスター「6 sense」


スミ1色で刷り、紙に折り目をつけたポスターである。折ったものに刷ったのではなく、刷ってから折り、断裁にかけるというアイデアに選考委員の視線が注がれたが、それもさることながらタイポグラフィと「間」をうまく役立てて全体のたたずまいを手堅く描き上げている点が秀でており、決してアイデアだけで終わっていない点が認められる。



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ポスター「LIFE」


輪郭線の内側に稠密に仕上げられたヴィジュアルの存在が、ポスターの四角い矩形に凛然と「はり」を持たせている。この霊気あふれるヴィジュアル自体がこのポスターのコンセプトそのものであり、コミュニケーションの骨になっている。見た者は一瞬にして作り上げられた空気の中で心打たれざるを得ない。



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ポスター「PLEATS PLEASE ISSEY MIYAKE BRAND AD 2009」


私達は、既に知っているイメージと照合されることで「繋がり」、ズレることで驚いたり、笑ったり、泣いたりと「感情変化」が生まれる。この「照合」と「ズレ」を巧みに扱った仕事である。品性とユーモアにあふれ、表現には精度がある。結果、私達に強い印象を残しヴィジュアルコミュニケーションの真骨頂を思わせる。



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カレンダー「Graphic arts of Japan: 4 春秋六曲」


法則を持たず、何にもとらわれず、いかに自由でいられるか。そしてそれがある種の機能を兼備してデザインという文脈の中で存在することができるか、果敢とも言える挑戦と造反の所産である。それが観者の心を揺さぶって止まない。理屈を越えて、ただひたすら手に入れたいと思わせるこのカレンダーは強烈な誘惑性を放散させている。



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パッケージ「PLEATS PLEASE ISSEY MIYAKE COLORED PENCILS LIMITED BOX 2008」


完全にして周密なディレクションから生まれた希少なケースであり、しかし正系の産物でもある。プロダクトに導く鮮麗なヴィジュアル・エントランスは観る者を静かに美しいモードに誘うのに充分である。



制作者のコメントはこちら(2009.06.08掲載予定)