「亀倉雄策」とは時折り一方的な接点がある。日本デザインセンター50周年史のデザインを担当したときに、創立当時を知るOBから創立メンバーであった亀倉のエピソードを聞く機会があった。数年前、雑誌『Pen』のグラフィックデザイン特集で亀倉について語る機会があり、以前に読んだ著書『離陸 着陸』を読み返しながら、数多くの名作を残したデザイナーとしての側面だけでなく、行動派としての側面を知ることになった。最近では、JAGDA広報委員会の活動の中で、亀倉がJAGDA創立当初に会員を募るために書いた、様々な熱い書面を目にして心動かされた。そうした中で、一貫してグラフィックデザイナーという職能を社会に開いていくために行動し続けた情熱的な姿が強く印象に残り、いつか自分も彼の意思を少しでも継承できるようなデザイナーになりたいと思うようになった。
今回の受賞作品となった「Osaka Metro」のCI計画は、対象が国際的な大都市を支えるインフラであることから、初めて訪れる人にも明快に機能する目印であることが求められた。一方で、一つの目印が街中に展開される量について想像し、都市の風景を形成する環境デザインの要件とも捉えることにした。角度を変えると大阪の頭文字 “O” になる立体的なロゴ “M” は、“Osaka” の “Metro” というテーマでしか実現し得ない、特殊な造形で応えたいという思いから生まれたアイデアである。列車内や駅構内のスクリーンに流すためのモーションロゴを作ったのは、公共的なデザインに対して多くの説明が求められる時代にあって、できるだけ言葉を介さずにビジュアルのみでデザインをわかりやすく説いていく試みでもあった。その成果かどうかはっきりはわからないが、知りうる情報の限りにおいて、概ね好意的に受け入れていただけたと思っている。
社会との接点を大きく感じ、手応えも感じられたプロジェクトであったが、それに対して嬉しい受賞の知らせがついてきた。この新しい「亀倉雄策」との接点に喜びを噛み締めながら、今後も自分なりにグラフィックデザイナーの職能を追求し続けていきたいと思う。
色部義昭
IROBE Yoshiaki