いつだったか、一番好きなポスターは何ですかと聞かれた時に、わたしは1964年の東京オリンピックのポスターです、と答えました。それは今でも変わりません。日の丸と金色の五輪のポスター、短距離走者のスタートした瞬間のポスター。それを目にする時わたしは、日本人として誇らしい気持ちになり、嬉しさがこみ上げてきます。多くの時間が経っても色褪せないこれらのデザインは眩しいです。わたしが作るものは、随分違っています。時間が経ってみると自分のデザインを反省することも多いです。どうして時間が経たないとわからないのか不思議に思いますが、それはわたしが少し成長したから?と前向きに考えたりもします。永い時間にも耐えられる色褪せないデザインをしたいと最近強く思います。
受賞作の 「AUDREY(オードリー)」はチョコレートとイチゴを中心においたスイーツのブランドです。一店舗目は、横浜髙島屋に、二店舗目は日本橋髙島屋にできました。嬉しいことにクリスマスやバレンタインデーの前は随分な行列ができる人気店になっています。飴玉やチョコレートの包み紙、デパートの包装紙や箱は、子供の頃に触れた大切なデザインで、それを宝物にしました。わたしがデザインしたAUDREYのパッケージも誰かのそんな存在になれれば嬉しい、でもそれが可愛いだけのそれではなく、デザインとしても成り立っている表現にしたいといつも思っています。この仕事は本当にありがたい仕事です。クライアントやお客さんに喜んでいただけること、そしてデザインできることが嬉しい。さらにこのような賞もいただけました。もっと多くの人にAUDREYを知ってもらえるようにわたしも頑張りたいと思います。この賞をいただいたことを新たなきっかけとして、客観的に自分がつくるものを見つめなおしたい。そして歩いたり走ったりしながら継続的に前へ進んで行きたいと思います。
渡邉良重
WATANABE Yoshie