第6回亀倉雄策賞 服部一成 HATTORI Kazunari

受賞作:ファッション情報誌『流行通信』2003年1月号~12月号ブックデザイン(adv:インファス)

受賞のことば

10代の終りのころ、通っていた美術予備校の先生に連れられて、銀座の松屋に亀倉雄策展を見に行った。グラフィックデザイナーになりたいと思っていたものの、それがどんな仕事なのかよくわかっていなかった当時の自分に、そのデザインの思想や芸術性の高さが理解できたとは思えない。けれども、デザインということの大きさ、豊かさ、作者の人格を確かに感じ、やはりこの仕事をやってみよう、と静かに興奮した、その記憶は長く残って自分を刺激し続けた。そのころ愛読していたのが『流行通信』で、クリエイティビティの高さで特別な輝きを放つ存在だったこの雑誌を自室の床に寝転がってくり返し眺めたが、20年経って自分がそのアートディレクターになるとは夢にも思わなかった。その仕事で亀倉雄策賞をいただくことになり、再び亀倉雄策と出会うことになった。この機会にと思い、作品集をもう一度じっくりと見つめ、エッセイ集『離陸 着陸』を再び読んだ。20年前には、はるか遠くにかすかに見える光のように感じた亀倉雄策が、今は目の前にそびえる巨木のように思えた。見事に繁ったその大きさを呆然と見上げながら、やはり自分はこの仕事をやっていこうと、もう一度、静かな興奮を体験している。

服部一成

服部一成

HATTORI Kazunari

1964年東京生まれ。1988年東京芸術大学美術学部デザイン科卒。同年ライトパブリシテイ入社。2001年よりフリーランス。主な仕事に、「キユーピーハーフ」、キリン「淡麗グリーンラベル」、JR東日本「TRAING」キャンペーンなどの広告のアートディレクション、『流行通信』誌リニューアルのアートディレクション、横浜美術館「JEAN-MARC BUSTAMANTE展」「中平卓馬展」などのグラフィックデザイン、旺文社『プチロワイヤル仏和辞典』『LEXIS英和辞典』、林央子『here and there』などのブックデザインほか。東京ADC賞(1999年、2000年、2001年)、東京ADC会員賞(2003年)、東京TDC会員賞(2004年)などを受賞。
(2004年6月現在)

掲載書籍:『JAGDA年鑑2004』