第3回亀倉雄策賞 原 研哉 HARA Kenya

受賞作:『紙とデザイン』ブックデザイン(adv:竹尾)

受賞のことば

亀倉雄策の晩年の仕事場を拝見したことがある。雑誌『クリエイション』の校正で、大きなルーペを手に、ポジフィルムと校正刷りを丹念に見比べておられた。
それはある作家の古いポスターで、ポジフィルムはすでに変色してぼろぼろ。しかし校正刷りは、往時の色調を再現して鮮やかだった。再現がおぼつかない文字は、新たに一から組み直されており、それは編集レイアウトというより復元、復刻の作業であった。その緻密な集中に、ポスター作家としての雄大さとは別の亀倉雄策の情熱と執念を感じた。
田中一光、永井一正に継ぐ受賞は、自分としては眩しすぎる気もするが、亀倉雄策の豊かな多面性を賞で表現してゆくとするならば、私もその一翼に加えていただくことができるのかもしれない。
受賞対象となった『紙とデザイン』は、竹尾の紙業100年の記念事業の一環で、50年におよぶ紙とデザインによる成果を展覧会として表現し、また書籍の形で記録するものだった。私としては渾身の仕事だっただけに、受賞は嬉しく噛みしめている。

原 研哉

原 研哉

HARA Kenya

1958年生まれ。武蔵野美術大学および同大学院でデザイン論を学ぶ。
1983年石岡瑛子デザイン室を経て日本デザインセンターに入社。1992年同社内に原デザイン研究所を設立。1998年には長野オリンピック開閉会式プログラム、1999年にはEXPO 2005 AICHIポスター、2000年には展覧会・出版複合プロジェクト『RE DESIGN』『紙とデザイン』、森アートセンターVI計画などを手がけている。講談社出版文化賞、日本文化デザイン賞、東京ADC賞、原弘賞、国際インダストリアルデザインビエンナーレ大賞、毎日デザイン賞など、内外で数多くの賞を受賞している。
(2001年6月現在)

掲載書籍:『JAGDA年鑑2001』