第10回亀倉雄策賞 佐藤 卓 SATO Taku

受賞作:21_21 DESIGN SIGHT 第2回企画展 佐藤卓ディレクション「water」のVI、ポスター、会場デザイン(cl:21_21 DESIGN SIGHT)

受賞のことば

私の世代が、亀倉雄策さんと接することができた最後の世代になるのでしょう。私が初めてJAGDAの年鑑選考委員になって、選考会場に足を運んだ時のこと。錚々たる方々がいらっしゃる中、亀倉さんが私に「君が選考委員なのか?」と微妙な表情で一言おっしゃったのを、今でもその広い会場の雰囲気と共に鮮明に思い出します。その言葉の意味が、「若い世代が委員に入ってきて喜ばしい」ということなのか、「君のような実力で委員になれるようなJAGDAでは、もう終わりだな」なのかまったく読めず、不安のまま選考に臨んだことを覚えています。今思えば、もちろん後者であったことは間違いありません。
亀倉さんとの最初の出会いは六本木のアクシスで初めて個展を自主的に開催した1990年に遡ります。僭越にも、来場していただくなど無理であることを承知の上、展覧会のお知らせを亀倉さんに送らせていただいたのですが、ある日、突然会場に立ち寄られたのです。それはそれは突然の出来事で、大事件でした。事務所で仕事をしていた私は、会場にいるスタッフからの電話で、そのことを知りました。「大変です。今、亀倉さんが来られています!」。私は「なんとか亀倉さんを引き止めておいてくれ」と酷なことをスタッフに伝え、タクシーに飛び乗りました。そして会場に着くと亀倉さんがいらっしゃるではありませんか。「あ、あの教科書に載っていた亀倉雄策が今、自分の目の前にいる」。呼び捨てにするほど遠い存在だった亀倉さんに対して、まずお会いしてすぐ自己紹介をし、作品の説明をしたかと思うのですが、たぶんかなりしどろもどろになっていたはずで、何を喋ったかまったく記憶していません。そして亀倉さんが帰られてから、何か粗相はなかったか、失礼にあたる言葉は使わなかったか、心配で自分の言動を思い出しながら確認したくらいでした。なぜかそれは覚えているのです。そのくらい、接点があったと言っても、あまりにも雲の上の方だったのです。
ここに亀倉雄策賞をいただくことになって、その当時の緊張感を思い出しました。そして、広くデザインの可能性を拡張することに意識が向かっている中、今一度、「グラフィックデザイン」を考えるきっかけを今回の受賞が与えてくれたことに感謝いたします。受賞の対象になりましたwater展は、多くの方々の参加により開催されたものです。ここに参加された皆様に重ねて感謝申し上げたいと思います。ありがとうございました。

佐藤 卓

佐藤 卓

SATOH Taku

1979年東京藝術大学デザイン科卒業、1981年同大学院修了。株式会社電通を経て、1984年佐藤卓デザイン事務所設立。「ニッカ・ピュアモルト」の商品開発から始まり、「ロッテ ミントガムシリーズ」「ロッテ キシリトールガム」「大正製薬ゼナ」「明治おいしい牛乳」「NTTドコモ P701iD」などの商品デザインを手掛けるほか、「金沢21世紀美術館」「国立科学博物館」などのVIデザイン、NHK教育テレビ「にほんごであそぼ」の企画メンバーおよびアートディレクション、大量生産品をデザインの視点で解剖する「デザインの解剖」プロジェクトを手掛けるなど活動は多岐にわたる。また、三宅一生、深澤直人とともに東京ミッドタウンにある21_21 DESIGN SIGHTのディレクターを務める。
(2008年6月現在)

掲載書籍:『Graphic Design in Japan 2008』

連絡先:
佐藤卓デザイン事務所
t. 03-3538-2051